焼物は土からできている。
焼物の本を開くと、たいてい「陶器」と「磁器」の違いから説明が始まっている。比較された項目を見ながら、磁器は石を多く含む土からできている、と理解した。石が多く含まれているから、水も通さず、硬く丈夫で焼成温度も高いのだと。
では、土ってなんだろう。
土は何からできているのか、と考え始めると、地球は何からできているのか、宇宙は……ときりがなくなってしまう。
土を意識するようになったのは、茶の湯で使うぬれ灰を作っていた時のこと。ぬれ灰の感触が、焼物の表面にかける釉薬と似ていることに気が付いてしまったのだ。
まず、ぬれ灰とは、湿し灰(しめしばい)ともいい、茶の湯で使う湿った灰をさす。炉に炭をくべる前にぬれ灰をまく。乾いた灰が白っぽいのに対し、ぬれ灰は濃い茶色をしている。ぬれ灰をまくのは、灰が舞わないようにするため、炭に火を付けやすくするため、などと聞く。
このぬれ灰は、炉中にある炭を燃やしてできた灰からつくる。炭の燃えかすなどの大きなゴミを取り除いた後、灰を水に漬け、上澄みを捨て、乾かす。次に番茶を加えて色をつける。そうしてほどよく乾かし、ふるいにかけ、荒すぎず細かすぎない粒になったところでぬれ灰となる。
灰を水で洗っているとき、ふと水底の灰をかき混ぜてみたくなり、沈んだ灰に触れた。どろっとした感触、手にまとわりついた灰。何かに似ていると思った。そう、釉薬の感触に似ていたのだ。
釉薬の成分には灰が含まれている。焼物を焼く窯の中で、薪などの燃料が、釉薬として働くことがある。燃料が燃えて灰になり、さらに高温で灰が溶け、それが焼物に付着していた場合、溶けた灰はガラス膜となって焼物に変化を与える。
つまり、炭や薪には燃える成分と燃えない成分があり、燃えない成分が残って灰となる。燃えない成分は高温で溶け、化学反応をおこし、別の姿に変わって冷え固まる。釉薬は、灰の、化学反応をおこす燃えない成分をうまく利用しているのだ。
そうすると、ぬれ灰と釉薬を別物として扱うなんて、なんて勘違いをしていたのだろうと思える。
さらに、灰は釉薬に利用するだけではなく、肥料として土にまくこともある。ということは、灰の成分は土にも含まれていることになる。灰は土から栄養を吸収した植物の燃えかすなので、当然のことかもしれない。
土と灰と釉薬の違いは、成分、水分量、加える熱だと思えるようになった。それらを調整すると、個体の焼物ができたり、液体の釉薬や、粒のままの灰として利用することができる。それは経験と知恵の積み重ねによるものなのだろう。
そうして土について考えていると、土からなんでもできてしまうと思えるようになった。植物や食べ物はもちろん、金属や私たちまでも。土から必要なものを取り入れるか、取り出したものから成り立っているのではないかと。
「泥や土から人が作られた」という神話を耳にしたり、「最初の文字は粘土板に刻まれていた」ということを目にすれば、あながち的外れではないような気になってくる。
ぬれ灰と釉薬の感触をきっかけに、とりとめもなく、土は何からできているのかを考えるようになってしまった。
